オーナー社長向け財務・税務専門新聞『納税通信』。
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海外にある関連会社に商品を通常の取引価格よりも低い価格で販売すると、課税所得が減少して法人税負担も少なくなる。一方、海外の関連会社からすれば日本の本社から商品を安く仕入れることで調達コストを抑えられ、利益が増える。ただし、課税対象額が増加する分、当該国での税負担は増える。結果、本来なら日本の本社の利益となる部分が関連会社に移転し、税収も海外へ移る。
こうした課税所得の海外移転を防ぐため、グループ間での取引価格が一般的な価格に比べて不当に安価、あるいは高価であると判断された場合、そこに課税逃れの意図があったかどうかにかかわらず、一般的な価格に計算し直して、移転された利益部分に追徴課税するというルールが「移転価格税制」だ。1986年の制度導入時に対象として想定していたのは世界中に子会社を持つ大企業だったが、経済のグローバル化が進み多くの中小企業も海外に関連会社を設立するようになっている。だが、企業規模に応じて適用を免除する除外規定などは設けられていないため、すべての事業者が課税対象となり得る。
同税制の恐ろしいところは、申告漏れの部分に日本で追徴課税されたとしても、海外で子会社が納め過ぎた分については、自動的に救済されることがないという点だ。二重課税された税金を取り戻すには、企業が両国の税務当局に「相互協議」を申請する必要がある。
だが、この相互協議をめぐり、解決までにかかる期間が、長期化の一途をたどっている。国税庁が11月に発表した最新データによれば、2024事務年度(24年7月〜25年6月)に処理した案件のうち、移転価格税制が適用されてから行われた相互協議1件当たりの解決までの期間は28.5カ月と、2年半弱におよんだ(移転価格以外に、恒久的施設に関する事案や、源泉所得税に関する事案も含む)。前年(21.5カ月)から、なんと1年で7カ月も延びている。相互協議をめぐっては、1年間での新規発生件数が、処理した件数を上回る「翌年への繰越増」の状況が続いており、今後も長期化していく傾向をみせている・・・(この先は紙面で…)
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