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▼今週の注目記事  納税3821号1面より

春の税務調査まっ盛り
乱発されるお尋ね文書

 春の税務調査シーズンまっ盛りだ。時間を掛けて大型案件を狙う「秋の調査」に比べ、4月から6月に行われる「ヨンロク」調査では短い期間でノルマ件数をこなす必要から効率が最優先されると言われる。そこで乱発されるのが、いわゆるお尋ね文書≠セ。新型コロナウイルスの5類移行から1年が経ち、コロナ禍のブランクを埋めるべく当局も力が入る。財産債務調書制度が見直されて提出対象者の裾野が広がったことで、今後は富裕層の相続税の申告漏れの捕捉に向け、さらにお尋ね≠ェ活用されそうだ(関連記事16面)。

重加算税の根拠となるケースも

 「消費税および地方消費税の確定申告についてのお尋ね」「◯年分の不動産所得の見直し・確認」「書類の提出について」など、お尋ね≠ヘさまざまな表記で納税者の手元に届けられる。

 お尋ね≠ヘ、あくまでも納税者に任意の協力を求める行政指導の一環で行われるものだ。そのため法的な回答義務はないのだが、大抵は「期限までに書類をご提出いただけない場合には調査を実施することがあります」と末尾に記されている。続けて「この調査の結果、申告内容を是正することになったときは、過少(無)申告加算税が課されることがあります」などと書かれているので、一般の納税者がこれを無視するのは難しく、実際には税務調査の一環にほかならない。

 当局が納税者に税務申告の内容などを問い合わせることは以前からあったが、調査もどき≠ニして多用されるようになったのはここ10年ほどのことだ。

 2011年の国税通則法の改正によって、それまで任意で行われてきた税務調査に当たっての事前通知が13年1月から義務化された。これにより調査前の手続きが煩雑化し、実地調査件数が減少したことから、効率よく調査先を選定できるお尋ね≠積極活用するようになったといわれる。

 そして20年からは新型コロナウイルスの感染拡大により対面での税務調査の件数が激減。20年7月から21年6月まで(20事務年度)に行われた実地調査は、所得税で2万3804件(対前年比39.9%)、個人消費税で1万1076件(同36.0%)、法人税で約2万5千件(同32・7%)にまで落ち込んだ。

 だが、調査件数が激減する一方で1件当たりの追徴税額は大きく膨らんだ。前年比で所得税は135%、法人消費税は210%、法人税に至っては224%という伸び率だ。こうした成果を後押ししたのがお尋ね≠セった。お尋ね≠ヘ当局の資料では「簡易な接触」に含まれて発表され、20事務年度の「簡易な接触」件数は、所得税が47万8千件(対前年度比129%)、個人消費税が7万5千件(同206%)と、お尋ね≠ェ当局の成果の一翼を担っていることが明らかになっている。

 任意であるお尋ね≠ノどう対応するかは税理士の間でも意見が分かれるところだ。東京・墨田区の税理士は「顧問先には必ず回答するように指導している」という立場だ。「無回答は隠し事があると思われる」というのが理由。一方、横浜市の国税OB税理士は、「大量に配布しているお尋ね文書の回答状況を当局が正確に管理しているとは思えない。回答したことでかえって目立ってしまい調査に移行する可能性のほうが高い」と、基本的に回答しないように顧問先には勧めているという。東京・板橋区の税理士は原則として回答するという考えだが、相続税については額によって対応を変えており、「申告が必要な人は二度手間になるので回答は不要だが、遺産総額が控除額以下で税務申告をしない人は、税務調査を受けるリスクがあるので回答するべき」という・・・(この先は紙面で…)

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